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24夜目
相談内容:私は請負契約で建物を建築中ですが、先日工事会社から建物が完成したので工事代金を払う様に連絡がありました。建物が完成したかどうかはどのように判断するのですか。また、工事会社は完成した建物は私どもに引き渡されるまでは工事会社の所有物だと言ってます。工事会社の主張は正しいのでしょうか。
回答: 1.建物の完成とは-請負契約では、工事会社が仕事(工事)を完成し、注文者(建築主)がその工事の結果に対して支払いをする事(民法632)それでは建物の建築においてどのような状態になった時「仕事(工事)が完成したといえるのでしょうか。 建物完成の時期については、「請負工事が当初予定された最終の工程まで一応終了し、建築された建物が社会通念上建物として完成してるかどうか、主要構造部分が約定とおり施工されているかどうか」等を基準にして判断されるというのは判例の立場です(東京地検判平3・6・14判時1413・78) *法的効果の違い:建物の完成時期が問題となるのは、完成の前後で以下のような法的効果の違いが現れてくるからです。工事業者側は、建物の完成によって建築主に対して工事代金を請求することができることになります。(もちろん、工事代金の支払い時期が別途の合意がなされている場合は除きます)また、建築主は建物の完成前にはいつでも契約を解除することができます。ただし、それによって工事業者に損害が発生する場合は、その損害の賠償責任が生じる場合が有りますが(民641)、他店のの完成の後は建築主は解除が出来なくなります(民635ただし書)さらに、建築主は、建物の完成後は、当該建物に瑕疵があることが判明しても、建築主は、工事業者に対して、細部不履行責任を問う事が出来ず(東京高判昭47・5・29判時668・49)、当該瑕疵について、瑕疵担保責任を追及することになります。この様に判例の立場では、建物の不具合に対する責任追及は、建物の完成前には債務不履行責任、建物の完成後には瑕疵担保責任という形で法的構成が変わりますので注意が必要です。 もっとも、建物としての外観が一応整った建物であっても、契約の目的が達成することができないような重大な瑕疵がある場合に、建物を未完成であると認定し契約解除を認めた判例も有ります(東京高判平3・10・21判時1412・109)以上のとおりご相談のケースでも、原則として予定された最後の工事(工程)迄工事が終了していれば建物は完成しており、予定の工程がまだ終了していない場合は、建物は未完成ということになります。
2. 建物の所有権の帰属-完成後の建物の所有権が、建築主に帰属するか、工事業者に帰属するかについて、判例は、基本的に材料の主要部分を誰が供給したかによって所有権の帰属を判断しています。(東京高判平9・313判時1603・72)この判例の立場では、特に一般の住宅建築では、建築主が材料の主要部分を供給することは稀だとおもわれますので、建物の所有権は工事業者に帰属することが原則となり、工事業者が建築主に引き渡しなどを行なう事により、初めて所有権が工事業者から建築主に移るということになります。ただ、工事業者はあくまで建築主のために建物を建築しているのであり、引き渡し前とはいえ建物の所有権を工事業者が有しているという選択は、一般的な建築主の意図とは離れていることが多いのではないでしょうか。そのため、学説では材料の供給者が誰であるかを問わず、建物の所有権は原則的に建築主に帰属するという見解が通説になってます。この点、判例も当事者間で完成と同時に建築主に帰属するとの明示、ないしは黙示の合意があれば、建物の所有権は建築主に帰属するした判例、建築主が工事代金の大部分を支払い、鍵も引き渡された事例で、引き渡し前においても、建物の所有権は建築主に帰属するとした判例があり、ある程度実情に即した判断を例も有ります。 以上のとおり、ご曽横断のケースについても、もし建物が完成してるということであれば、判例の立場では材料の大部分を工事業者が供給していれば、少なくとも引渡し前には工事業者が建物の所有権を有することになりますが、具体的事情によっては黙示の合意に基づき完成と同時に所有権が所有権が建築主に移っていると主張できる場合もあるという回答になると思います。(私見:請負工事における工事代金支払い金額により建築主が材料の大部分の支払いをしている場合もあると思います)
考察:建物の完成、未完成が問題となるのは、工事業者の立場からは:請負代金全額の請求が可能になるという事です。逆に建築主からの立場からは:建物に不具合がある場合、建物の完成の前後で工事業者に対する請求の法的構成が変わり、建物完成後は瑕疵担保責任のみが追及でき、債務不履行責任の追及は出来ない点、また建物完成後は契約解除が出来なくなるという点からだという事は前記の通りです。 ただ契約解除の点については「工事業者が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかない場合」は、建替え費用相当額の損害賠償請求を認める最高裁判例が出ました(最高裁判平14・9・24判時1801・77)完成後の建物においても、一定の重大な瑕疵が存在する場合、解除と同等の結論を導くことが可能となりました。また、近年では、完成後の建物について、建て替え相当の重大な瑕疵が存在する場合、端的に建築主からの解除権行使を認める判例も出ています。(京都地裁判平16・3・31欠陥住宅判例4・140) 2024.07.02